夫婦共有名義って本当におトク?

夫婦共有名義の仕組みと住宅ローン控除との関係を、ポイントを押さえてご紹介します。

夫婦共有名義って本当におトク?

住宅ローンを組む際、「夫婦共有名義にすると経済的だ」という話を聞いたことはありませんか? ひと言で「共有名義」といっても、ひも解いてみればその制度は意外に複雑。紙の上だけの契約ではなく、実際のお金のやりとりに関わってくるものなのです。平成18年以降の住宅ローンの控除率減少なども交えて、「夫婦共有名義」について考えていきましょう。

そもそも「夫婦共有名義」とは?

「夫婦共有名義」と聞いて、どんな制度を想像するでしょうか? 聞いたことはあるけれども、どんな制度かよく分からないという方が多いかもしれません。
「夫婦共有名義」とは、文字通り夫婦で資金を出し合って共通財産として家を所有することです。例えば、夫婦がお互いにローンを組んだり、どちらかが頭金を出したりする場合などがそうです。

夫婦共有名義によって得られる金銭的メリットは次の2つです。

メリット1
1つ目のメリットは、夫婦それぞれで「住宅ローン控除(減税)」が受けられるようになる点です。
「2人分減税される」と聞けばものすごくお得に思えますが、すべてのケースがそうとも限らないのです。例えば妻が仕事を辞めて収入がなくなり、夫がその肩代わりをして支払う場合、名義をそのままにしておくと贈与税が発生します。やみくもに夫婦共有名義にして、後々困ったことにならないようにしましょう。
メリット2
2つ目のメリットは、夫婦共有名義にすることで家を売却する際「居住用財産の3,000万円の特例」として夫婦それぞれで3,000万円の控除の特例を受けることができる点です。
ただし、この特例が適応されるのは売却時に利益が出た場合のみ。最近では物件を売って利益が出るケースは少ないので、あまり大きな期待は抱かない方が賢明です。

住宅ローン控除のメリットは減少しつつある?

夫婦共有名義にした場合、住宅ローン控除をそれぞれが受けると、一体どれくらいの金額が減税されるのでしょうか? その仕組みを具体的な数字とともに検証していきましょう。

住宅ローン控除とは、正式名を『住宅借入金等の特別控除』といいます。住宅ローンを組んで家を新築・購入すると、一定の購入条件を満たした場合を対象に、入居後10年間の年末ローン残高の1%(平成18年の場合、8年目以降は0.5%)が所得税から差し引かれる仕組みです。控除額が所得税を超える場合は、所得税の金額まで払い戻されます。
不動産広告などで「住宅ローン控除が最大○○○万円受けられる!」といったうたい文句を見たことはないでしょうか。平成11年から16年の5年間は控除率が優遇されていたので、夫婦共有名義にすることで、夫婦1人ひとりに「住宅ローン控除(減税)」を受けるメリットがありました。しかしながら、平成18年からの控除率が8年目以降は0.5%と減少するなど、夫婦共有名義にするメリットがすべての人にあるとは一概に言えなくなったのが現状です。

入居年 控除対象借入限度額 控除期間 控除率
平成18年 3,000万円 10年 ・1年目〜7年目1%
・8年目〜10年目 0.5%
平成19年 2,500万円 10年 ・1年目〜6年目1%
・7年目〜10年目 0.5%
平成20年 2,000万円 10年 ・1年目〜6年目1%
・7年目〜10年目 0.5%

年度別住宅ローン控除率の変化

住宅ローン控除のメリットを検証する

夫1人で住宅ローンを組んだ場合の住宅ローン控除率
(借入れ額3200万円、35年ローン、金利3%、定率減税は無視)

入居年 借入金年末残高 控除額 控除率 実控除額
1年目 3147万円 30万円 1% 24.7万円
2年目 3093万円 30万円 1% 24.7万円
3年目 3037万円 30万円 1% 24.7万円
4年目 2980万円 29.8万円 1% 24.7万円
5年目 2920万円 29.2万円 1% 24.7万円
6年目 2860万円 28.6万円 1% 24.7万円
7年目 2797万円 27.9万円 1% 24.7万円
8年目 2732万円 13.7万円 0.5% 13.7万円
9年目 2666万円 13.3万円 0.5% 13.3万円
10年目 2597万円 12.9万円 0.5% 12.9万円
  212.8万円

※平成18年1月1日〜12月31日までに住宅ローンを組んだ場合

夫婦共有名義で住宅ローンを組んだ場合の住宅ローン控除率
(借入れ額3200万円、35年ローン、金利3%、定率減税は無視)

入居年 借入金年末残高(夫) 借入金年末残高(妻) 控除額 控除率 実控除額
1年目 1888万円 1259万円 夫18.9万円
妻12.6万円
1% 31.5万円
2年目 1856万円 1237万円 夫18.5万円
妻12.4万円
1% 30.9万円
3年目 1823万円 1215万円 夫18.2万円
妻12.2万円
1% 30.4万円
4年目 1788万円 1192万円 夫17.9万円
妻11.9万円
1% 29.8万円
5年目 1752万円 1168万円 夫17.5万円
妻11.7万円
1% 29.2万円
6年目 1716万円 1144万円 夫17.2万円
妻11.4万円
1% 28.6万円
7年目 1678万円 1118万円 夫16.8万円
妻11.2万円
1% 28.0万円
8年目 1639万円 1093万円 夫8.2万円
妻5.5万円
0.5% 13.7万円
9年目 1599万円 1066万円 夫8.0万円
妻5.3万円
0.5% 13.3万円
10年目 1558万円 1039万円 夫7.8万円
妻5.2万円
0.5% 13.0万円
  248.4万円

※平成18年1月1日〜12月31日までに住宅ローンを組んだ場合

上のケースでは10年間で約35万円ほど得をするということになります。この金額をお得と見るか否かは人それぞれですが、具体的な数字を出して検証し、その額が10年間で価値ある金額かどうか、じっくり見極めてみてはいかがでしょうか。

知っておきたい夫婦共有名義にする際のポイント

では最後に、夫婦共有名義にして住宅ローン控除を受ける際に気をつけたいポイントをご紹介します。

夫婦のライフプランを考える
「子どもが生まれた」「夫が脱サラして収入が減った」など、家族の生活は時と共に変化します。長期間にわたるローン返済や手続きの手間を考えると、今後の収入やそれに合わせた支払いの割合をできるだけ明確にしておきたいものです。
例えば、どちらかが仕事を辞めたり、収入が減った場合、夫婦のどちらかが一方の分を払うという行為は贈与にあたり、贈与税が発生してしまいます。支払いの割合に変化があった場合はそのたびに名義の書き換えを行わなければならないので、子どもが生まれた場合、妻は仕事を続けるのか、など夫婦で共有名義にする前に2人で共通のライフプランを築いておくのが賢明です。また、離婚した場合の手続きなどについても、念のため確認しておくと安心です。
価値観の問題
お金以外にも考えておきたいのが、夫婦の価値観についてです。夫婦の住まいである家を共有名義にし、2人でローンを返済することが「共通の財産を築き上げる」という精神的な支えになる場合もあります。ただし、価値観が先行して共有名義に踏み切ってしまっては、本末転倒なので注意しましょう。

夫婦の収入やライフプラン、価値観を踏まえた上で、本当に夫婦共有名義にすることが自分たちに最適かどうか、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。

<取材協力>
■石川 英彦(いしかわ ひでひこ)
ファイナンシャルプランナー。1968年生まれ。
株式会社マネーライフナビ代表取締役社長。貯蓄・保険・年金・住宅ローンなどお金に関するカウンセリングサービスを提供。マネーライフに関する企画立案や執筆、番組制作も行う。監修に『生命保険 知って得する数字のカラクリ』などがある。
マネーライフナビ

<取材・文>
■東川 奈美(ひがしかわ なみ)
編集プロダクション、アーク・コミュニケーションズ所属。雑誌・ムック・Web媒体などの編集・制作・執筆を行う。